最近あまり聞きませんが、資産形成などをする際によく聞く言葉「老後2000万円問題」。
2年も前にメディアで取り上げられた内容ですが、あまり詳しく知らないんですよね。
なんとなーく、資産形成しないとだめだぐらいの認識で。笑
そこで、今回はその発端となった報告書を読んでみての感想を記事にしました。
老後2000万円問題とは?
簡単に書くと、2019年6月3日金融庁の金融市議会 市場ワーキング・グループがまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」の中の一文が基となった問題です。
その問題の文章と言うのが、下記です。
収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取り崩しが必要になる。
「高齢社会における資産形成・管理」報告書より
これにより、メディアや野党・国民からは「公的年期制度の崩壊」や「責任を放棄している!」、「年金だけじゃダメなの?」などなど様々な意見が寄せられた一連の騒動です。
経緯について
とりあえず老後2000万円問題を知るためには経緯も知らないとねってことで、自分なりに調べてみました。
これを機に、メディアや議会などでも取り上げられ、麻生大臣や安倍首相が声明を出すことに…。
理由としては、国民に不安や誤解を招いたというのと政府のスタンスとも違うからみたいです。

誰がまとめたの?
この報告書自体は、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」がまとめてます。
なんですけど、そもそも金融審議会ってなんやねんって話ですね。
- 金融審議会とは
-
金融制度や資本市場など国内金融関係の重要事項について、調査・審議を目的に設置された、内閣総理大臣、金融庁長官および財務大臣の諮問機関
要は、有識者で構成された機関に意見を求めたってことなわけですよ、政府としてね。
この報告書ってなに?
この報告書の目的と構成について説明していることが分かります。
【目的】
- 高齢社会&人生100年時代における金融の目指すべき姿とはなにか?その議論に必要な情報をまとめた
【構成】
- 人口や収支事情、金融資産や意識についての現状整理
- 上記に合わせて、どういうスタンスでこれから考えていけばいいのか?
- ②の考えを基に取れる対策ってなにがあるんだろう?
つまるところ、別に公的年金制度に問題があるとか政府の公的な責任を放棄しているとか言ってないんすよ。
現状整理した結果、資産の取り崩しが発生していて、そんな状況に合わせてどんな姿を目指すべきなんだろうか?という事しか言っていない。
2,000万円不足の元ネタは?
これは下記の情報を基にした場合、30年で2,000万円ほど資産の取り崩しが必要になるというのを報告したんです。
- 夫婦(夫65歳、妻60歳)でともに無職
- 30年後まで夫婦ともに健在
- 家計収支は2017年度の家計調査を基にする

これらの情報を基に計算すると、老後30年間で約2000万円不足するという報告の内容になるわけです。
54,519 × 12カ月 × 30年 =19,626,840円
自身の金融資産から補填!?
老後2000万円問題=老後生活で2000万円不足するというのはある種あっています。
が、報告書内で別に「高齢者の借金世帯が増えている」とかいっているわけじゃなくて、「公的年金などで賄いきれない部分(赤字相当)は自身が保有する金融資産から補填することとなる」と言っています。
根拠として示されている画像を引用してきました。

重要なのは、「高齢夫婦無職世帯の平均純貯蓄額2,484万円」です。
純貯蓄額から公的年金制度で賄い切れていない分を取り崩しているので、確かに赤字には違いないのですが言葉から感じる意味合いで考えると、確かに誤解を招く言葉ですねー…。
算出データで気になったところ
上のモデルケースで言えば、2000万円不足するという認識になります。
なんですけど、正直モデルケースでの算出にはいささか疑問と言うか謎が残る部分が幾つかありました。
独身のケースが無い
現在の日本は未婚率も高く、高齢単身者も多くいます。
老後2000万円問題のモデルケースは、夫婦ということで全員が全員、このケースに当てはまるわけでは無い気がする。
住居費がかなり少ない
上記の家計収支で住居にあたる部分が5.8%で金額にすると、13,656円です。
ぶっちゃけ関東圏でこの金額の賃貸はほぼ無い。
多分、全国平均から算出されたものなんだろうけど、関東圏で上記の金額で賃貸を探すのは困難です。
年齢による変化がない
あくまで高齢夫婦無職世帯の家計収支と言っているだけです。
60歳なら60歳なりの生活、70歳なら70歳なりの生活と、それぞれの年齢ごとの収支ではないんです。
60歳時点の生活を90歳でしてみろって言われて出来る人がどれほどいますかね?
介護費が考慮されていない
高齢に近づくと、寝たきりになったり買い物に行くのも大変だったりと介護が必要になります。
そうすると、介護に充てる費用が出てきます。
新たな費用が出るということは、収支のバランスがモデルケース以上に悪くなりますよ?
あくまで平均である
個人的にこの手のやつで使われる「平均」って言葉を信用していません。
重要なのは”中央値”です。
平均では、異常に支出が高い人も以上に支出が低い人も一緒くたにされています。
生活レベルが考慮されていないんです。
こういう時に必要なのは、「高齢夫婦無職世帯における支出額が一番多い範囲(レンジ)」=中央値が必要です。
2017年以降の調査結果って?
高齢夫婦無職世帯の家計収支は家計調査が元となっていてこれは毎年調査されています。
結果はちゃんとまとめられていますし、2018年からは単身者のデータも追加されていますので、そのデータと併せて上記のモデルで計算した場合の不足額も一緒に表としてまとめました。
年度 | 高齢単身者無職世帯 | 30年間の不足額 |
---|---|---|
2018年 | △41,872円 | △15,073,920円 |
2019年 | △ 33,269円 | △11,976,840円 |
2020年 | 1,111円 | 399,960円 |
年度 | 高齢夫婦無職世帯 | 30年間の不足額 |
---|---|---|
2018年 | △ 38,670円 | △13,921,200円 |
2019年 | △ 27,090円 | △9,752,400円 |
2020年 | △ 7,723円 | △2,780,280円 |
こう見ると、年度によって家計収支には大きな開きが有ることが分かります。
勿論、2020年はコロナ渦であったという影響もありますが、コロナ渦直前の2019年で考えれば老後2000万円どころか老後1200万円問題まで下がっています。
2000万貯蓄を逆算する
貯金だけで不足分の2000万円を賄うと考えた場合を逆算してみましょう。
22歳から働き始めて65歳の定年までの間に2000万を貯めようとした場合、
2000万 ÷ ((65歳 - 22歳) × 12カ月) = 38,759円
毎月4万近く年間なら48万円ためなければなりません。
貯めるだけでなく、ライフイベント(結婚や出産etc)があるため中々厳しいと言わざるを得ない。
ですが、実際にはボーナスや退職金・パートや副業・節約/節税のほかに投資などもしている人もいるので人によってはもっと余裕があるでしょう。
なんか、あんまり心配する必要が無くなってきた気がする…。
公的年金制度について
報告書の中で公的年金制度について触れている項目があります。
それが『公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク』です。
その中で以下のようなことが書かれています。
- 公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱でありつづけることは間違いない
- 少子高齢化によって年金の給付水準が今までと同様の物であることを期待するのは難しい
- 公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある
これだけ読んで、責任を放棄しているとは感じないです。
そもそも少子高齢化は以前からずーっと叫ばれています。
更に、公的年金制度は働き盛り世代が高齢者を支える図式で成り立っていますが、それが成立しない以上、公的年金だけで臨む生活水準に届かない可能性があるっていうのは正しい解釈です。
「年金制度が破綻するから自分でガンバ」とはこの報告書内で一言も言っていない。
なんなら「公的年金制度が老後の収入の柱だよ!」って言っているんだからよくね?w
あとがき
さて、老後2000万円問題とか最近ではメディアで取り上げることも少なくなりました。
そんなネタをなんで取り扱ったのか?
この歳になって思うことは、「もっとしっかりと貯金していれば…」と何度でも悔やむんですよ。
あの時、この選択をしていなければ…とか
あそこで仕事をやめなければ…とか
なんであんなにお金をバンバン使って遊んでたのか…とか
もちろん、その時々では最良の選択だったのだと思います。
それでも、老後2000万円問題に直撃した時の「焦燥感」や「後悔」は相当なものでした。
過去を後悔することは出来ても、変えられないのであれば未来を見るべきで、そのためにも自分がなんとなく不安に感じている老後の不安について向き合うことにしました。
向き合った結果、気持ちが少し楽になりました。
まだまだ自身の金融資産が足りていなくて問題も山積みですが、ゴールが見えていればそこに至る方法はいくらでもあるんですからやりようはある。
この報告書内でも同じような文章がありました。
年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して老後の収入が足りないと思われるのであれば、各々の状況に応じて、就労継続の模索、自らの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった「自助」の充実を行っていく必要がある
「高齢社会における資産形成・管理」報告書より
「見える化」していき、「自助」の充実を図る。
いまの自分にできることがなにかを考えながらこれからの生活と向き合いたいですね。
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